『売れる作家の全技術』の感想と内容紹介|小説の書き方が学べる1冊

『売れる作家の全技術の表紙』

『小説講座 売れる作家の全技術 ビューだけで満足してはいけない』を読んだので、どのような内容だったのか感想などを紹介します。

有名なハードボイルド小説『新宿鮫』の作者で日本推理作家協会の会長だった大沢先生が、小説の書き方から出版業界の裏事情まで幅広く教えてくれる1冊です。

『売れる作家の全技術』の内容紹介

『売れる作家の全技術』は小説家の大沢在昌さんが「小説 野生時代」の企画で行った作家志望者向けの小説講座を単行本化したものです。

小説を書くための様々な技術や、プロの作家としてやっていくための心得などが学べる10回の小説講座と、その後の質疑応答の内容、受講生たちが書いた作品へのダメだしやアドバイスなどが収録されています。

なので、自分も講座に参加しているような感覚で小説の書き方について学んでいけます。

どんなことが学べるのか

各講義の内容は以下のようなものです。

【第一回:作家で食うとはどういうことか】

第一回の講義では、作家になるために必要なことや作家の財布事情などについて語られます。

【第二回:一人称の書き方を習得する】

第二回の講義では、一人称で小説を書く際の注意点(視点の乱れをなくすなど)やコツが学べます。

【第三回:強いキャラクターの作り方】

第三回の講義では、キャラクターに個性を持たせる方法やキャラクターを描写する際の注意点について学べます。

【第四回:会話文の秘密】

第四回は実際の会話と小説の中の会話はどうちがうのか、会話のテクニックについての講義です。

【第五回:プロットの作り方】

第五回は、物語をどこから書き始めればいいのかなどのプロット作りのコツが学べる講義です。

【第六回:プロットには「トゲ」が必要だ】

第六回の講義ではプロットにひねりを加える方法や、作家としての武器を持つことの大切さなどが語られます。

【第七回:文章と描写を磨け】

第七回の講義では文章にリズムを持たせる方法、的確な言葉の選び方、描写の仕方、などの文章を書くコツが学べます。

【第八回:長編に挑む】

第八回の講義では長編小説の中だるみを防ぐ方法、キャラクターの動かし方など長編小説を書く際の注意点などが学べます。

【第九回:強い感情を描く】

第九回の講義ではプロになることの難しさなどについて語られています。

【第十回:デビュー後にどう生き残るのか】

第十回の講義ではプロとしての心得や編集との付き合い方について語られています。

『売れる作家の全技術』の感想

小説を書くための技術はもちろんのこと、プロの作家になるための戦略や作家をつづけていくことの難しさについても学べる1冊でした。

第一回目の講義から作家の厳しさを教えてくれます。毎年何人もの作家が新人賞を受賞してデビューしますが1年後に生き残っているのはひとりか二人。ベストセラーを出して世間に知られるようになる作家はさらに少なく、5年か10年にひとりだそうです。

新人作家がハードカバーの長編小説を書き下ろしても初版4000部程度なので収入は68万円程度。なので、年収200万以下のプロもたくさんいるきびしい世界です。

参考になった部分のまとめ

『小説講座 売れる作家の全技術 ビューだけで満足してはいけない』を読んで個人的に参考になった部分をまとめました。

見出しの()内には何回目の講義にその内容が収録されているのかを記しています。

作家になるために大切な4つのポイント(第一回)

  1. 正確な言葉を使う:自分の日本語力を疑って辞書を引く習慣を身につける。誤った言葉を思い込みで使わないように気をつける。
  2. 自分の原稿を読み返す:時間を空けて推敲するのがコツ。時間を空けて読まないと自分の頭の中にある文章を読んでしまうから。
  3. 毎日書く:原稿を早く仕上げるには毎日決まった分量を書く習慣を身につけることが大事。
  4. 手放す勇気を持つ:どうしても書けないときは次の作品に向かうために、とりあえず書き上げる。もしくは思い切って作品を手放す。

人物描写は雰囲気で伝える(第七回)

その人物の顔や髪型、服装などの描写はあまり重要ではない。その人物のイメージをかき立てるような言葉を探す。輪郭そのものを描くのではなく、周囲を埋めていって輪郭を明らかにする。

キャラクターの性格は地の文で描写せず、行動や会話で伝える。

描写の三要素(第七回)

描写は「場所」「人物」「雰囲気」で決まる。全部を同じ割合で描写してもいけないし、どれかひとつを突出させてもいけない。

説明すべきことを説明すべき場所できちんと説明するのが大事。

普通の言葉で新しい表現をする(第七回)

川端康成の『雪国』の冒頭はすばらしい表現だが、難しい言葉をつかっていない。「夜の底が白くなる」は、すばらしい表現だけど、普通の言葉の組み合わせから生まれている。

登場していない人物も動いている(第八回)

すべての登場人物が動いているということを忘れてはいけない。書かれていないときでも彼らは行動している。あたりまえのことだが長編小説になると忘れがちな人が多い。

推敲まで作品を寝かせる(第八回)

小説を書き上げたら最低でも一週間は寝かせないといけない。時間をおくことで自分の作品を他人の文章のように読むことができる。長編であればあるほど寝かせる期間を長くする。

どんな人におすすめなのか

小説やライトノベルを書いてみたいと思っている人、特に文章で物語を表現するコツを知りたいという人には役に立つ1冊だと思います。ただ、プロットの作り方や物語の構造について学びたい人には少しもの足りない内容かもしれません。

プロットの作り方や物語の構造について知りたい方には映画脚本の指南書(『SAVE THE CATの法則』など)のほうがわかりやすくておすすめです。